目黒駅西口から徒歩1分、山手線の線路沿いにあるニューヨークのストリートやパリのマンションのような建物で、広告などを撮影するスタジオと撮影小物のレンタル業を行っているEASE。
目黒に「街並みに見える建物」を作ったEASEが新たに手掛けたのは、2014年にオープンした「EASE village」。
石畳の地面に、色とりどりの小さなショップ風の建物、素敵な街灯、ベンチ、そして教会まであって……、目黒の街の中に、小さなヨーロッパの街を作り出しました。
普段は雑誌やテレビ、アーティストのMVなどを撮影する屋外スタジオとして使われている「EASE village」で、EASEはふたつの新たな試みを始めました。
その一つが、2015年10月から開催している、「路地裏dining」。
「EASE village」というスペシャルな空間を開放し、ケータリングカーが提供する美味しい料理を食べて、海外ビールやこだわりのワインを楽しむ。そんなイベントです。
オレンジ色の街灯やろうそくの明かりにほのかに照らされたヨーロッパの街並みの中で、
撮影小物として使われている椅子に座って、家族や仲間、恋人と美味しいものを食べる。
そこには、「食べる楽しみ」だけでなく、「この時間を楽しむ喜び」がありました。
まずは、どうして「路地裏dining」を開催しようと思ったのか、代表の福島澄夫さんにお伺いしました
特別な体験ができる時間を作りたい……「路地裏dining」
「villageは、基本的に夜は空いているので、何かできないかな、というのがあって。
『うまい飯を食わせる店』というのは無数にあって、みんな美味しいし、接客も良い。
我々は飲食に関しては素人なので、普通の店をやるんだったら我々に出る幕はないんだけど、変わった空間でちょっとしたものを食べられて、こういう体験ができる場所は他にはないじゃないかな、と。
実は、ここ2年ほど社内の飲み会があまりできていないので、『社内の飲み会を増やそう』という裏コンセプトもあったりしたんだけどね(笑)
仕事終わった人から寄っていって、みたいな」
2015年10月8日に立ち上げて以来、これまで6回にわたって開催された路地裏dining。
仕事帰りの方が仲間でわいわい飲み会したり、恋人同士がろうそくの灯に照らされながらまったりとデートしたり、子ども連れの家族がにぎやかに食事したり。
目黒といういつもの街なのに、映画の中のワンシーンのような、洋雑誌の1ページのような、とっておきの非日常になる。
どの夜も大盛況の開催となりました。
「子どもが走り回ってたりするのが、また良いなと思うんですよね。
こういう景色があると、本物の街みたいになる。
地域の人、近所に住んでいる方にこそ、たくさん来てもらいたいですね」
冬の間は寒さのためお休みしていた路地裏diningですが、春にはまた再開されることになっているそうです。
「次回は4月、桜の頃に再開します。
villageの上に見事な桜があるので、花見しながらできたらいいですね。
できれば2週に1回、もっとうまくいけば毎週金曜の夜に開催できたらいいなと思ってます」
毎週開催されたら……私は毎週来てしまいそうです……。
これからの路地裏diningではどんな展開を考えていらっしゃいますか?
「以前、ロスのショッピングモールで衝撃的な体験をしたんですよ。
ロサンゼルスというのは温暖なところなんですけど、ショッピングモールで突然雪が降ってきたんです。
それがあまりにも衝撃的で。
だから、『夏に雪を降らせる』みたいなことができたら面白いんじゃないかと思っています。
ご近所の方に迷惑かな!?
そういう特別な体験をして、そんな時間を作りたいなと思っています」
4月再開予定の路地裏dining。
開催日時がリリースされましたら、目黒駅前新聞でも告知させていただきます。
特別な空間での特別な時間を体験しに、ぜひ訪れてみてください。
EASEの真骨頂……「つい買いたくなる時間」を作る
「EASE Creator’s Market」
「EASE village」で開催されているもう一つの試みは、「EASE Creator’s Market」。
2013年から年2回のペースで開催されいてる、クリエイターたちによるフリーマーケットのイベントです。
ヨーロッパの街並みの中、撮影で使用するアンティーク家具を使い、ショップが展開されている「Creator’s Market」。
そこではどんな試みがなされているのでしょうか。
「よくあるフリーマーケットで、ブルーシートの上に商品が並んでいると、お客さんとのメインの会話って『値引き交渉』になると思うんです。
『これいくらですか?』『1,000円です』『800円にならないの?』とか。
でも、ここでは、金額の話をしている人がいない。
空間にこだわって楽しい時間を作ると、『これはどういう商品なの』『どこから持ってきたの』『あなたはなんのためにこれをやるの』とか、自然とそういうコアの話ができるんです」
それは、お客さんの「買いたい」という気持ちに、直結しているようです。
「出店者が『ものすごく売れた!』って言うんですよね。
今までいろんなところに出したけど、ここが一番売れた、と。
今は物が売れない時代です。日本人の9割の人が『ほしいものがない』時代なんですよね。
成熟社会とはそんなものです。
日本も3~40年前は爆買いしていた時代だった。でも今は違います。
しかし、企業は売ろうとして商品を作っているし、我々は広告を通して『買いたい気持ちにさせる』のが仕事です。
だから、『つい買いたくなる時間』を作るのが大事だと。
楽しい時間になると、普段は食べないものを食べたくなったりして、そういう気分にさせることが大切だと思っています」
そのために、EASEではマーケットの前に出店者の方と事前に綿密な打ち合わせをされるそうです。
「開催の1カ月半くらい前から出店者の方と協議して、その方のイメージに合う家具を選んでもらうようにしています。
当日撮影で貸し出すことになってしまったら使えないので、似たものに変更になるのですが、基本的には出店者の方に自分の好きな家具に自分の商品を置いてもらうようにしている。
だいたい50件くらい出店するから、10人のスタッフが一人5件ぐらい担当を持っていて、普段の業務以外にそれをやるから、この期間はけっこう大変ですよね(笑)」
そんなこだわりに満ちた「EASE Creator’s Market」。
昨年11月に開催する予定だった第5回は、雨で中止になってしまってとても残念でした……。
「アンティークの家具なんかを外に出すので、どうしても雨はダメなんですよね。
我々も大変残念でした。
出店者の方もこのために商品を用意してくれているし、遠方からこのために飛行機のチケットを買われていた方もいたりしたので、申し訳なかったです。
今年からは雨天に備えて、予備日を設けようと思います」
2016年は5月中旬の開催を予定しているそうです。
こちらも、リリースがありましたら目黒駅前新聞でも案内させていただきます!
『楽しい“空間”』ではなく、『楽しい“時間”を作る』仕事
福島さんのお話をお伺いしていると、「時間を作る」という言葉がキーワードとして出てくるような気がします。
「そう。我々は、『楽しい“時間”を作る』仕事なんだと思います。
『楽しい“空間”』ではない。
スタジオやスタイリングは、パッと見たときに『個性的でかっこいい』と思われる必要はあるけど、それは主役ではないんですよね。あくまでも脇役。
主役はモデルだったり商品だったり別にいて、主役がいて初めて成立する。
何かを作っても、それで完成じゃなくて、そこで何かをやって初めて、この空間が生きてくるんです。
主役とケンカをしない、主役をより活かす「名脇役」をずっと作ってきました。
これからは撮影の世界だけにとどまらず、一般の生活の中でも、そういった提案ができたらと思っています」
2016年は、建築会社と共同で、住宅への提案を始める構想もあるとか……
EASEのこれからの展開に、益々目が離せません!
「目黒の山手線沿いにこういった建物を作って、色んな人がここを見ているようです。
山手線の電車の中からも見えますからね。
初めて来た人も、『あ、ここだったんですか! やっと中に入れました』とおっしゃる方も多いんですよ。
ここにいるだけで、既に『発信している』という意識があります。だから、『では何を発信していこうか』、と次の段階のことを考えることができるのかもしれません」
スタジオであり、撮影小物のレンタル業者であるEASEですが、目黒の街に中にもう一つの「街」を作り、この街に骨をうずめると決めたことで、新しい段階へと登り、また広がっていく――
街と人の融合、そしてそこで作られる「時間」には、無限の可能性が広がっているんだということを、強く思わせてくれました。 <了>
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